山奥の日々雑音 〜イナカノオト〜

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何故か孤高の音響表現者に惹かれる その1 ~The Azusa Plane (Jason DiEmillio)~

書きたいことを徒然に書けるのが、ブログのいいところ。

今回も突然思いついたので、ツラツラと書いていこう、、、とイナカノインキョは思うのでした。

 

 

ヤギ小屋、70年代のパンク・ニューウェーブノスタルジー、田舎暮らし、そして好きな音楽=アーティスト(今回)のこと。

このブログのトピックは、それぞれがほとんど脈絡や関連性のない記事で始まったけど、まあいいや。

目的も特にない自分の趣味の世界の覚書のようなものなんで、マニアックにいきたいと思います~。

 

 

そう、題名通り、

 

 

何故か孤高の音響表現者に惹かれてしまう

 

のでした。

 

 

自分は、コレクター的性分も相まって、特にマイナーでコツコツとあまり変わり映えのしない作品を発表し続けるアーティスト、絶対にメジャーなオーバーグラウンドなシーンには登場しえないようなアーティストが心に引っかかってしまうのです。

なんでかな~。。。

 

 

その1として、まず、最初に取り上げるのは、The Azusa Plane。

 

  

2000年前半のアメリカンインディーズ、いわゆるシューゲーザーサウンドと呼ばれる一連の音楽たち、に興味がある人はその名前を聞いたことがあるかも知れないし、作品も持っているかもしれませんね。

でも、ほとんどの人が名前さえも聞いたことがないはずの、ド・マイナーなアメリカのペンシルバニア出身のアーティストです。

 

 

ããã

 

 

The Azusa Planeは、実はJason DiEmillioというアーティストのワンマンバンド。

活動としては、主にフィラデルフィアを中心にしていたそう。 

 

音のジャンルとしては、多分前述のシューゲーザーに入ると思います。

シューゲーザーは、サイケデリックなロックの一分野で、何重ものギターサウンドやノイジーな音が壁のように覆いかぶさってくる感じ?、で合ってるかな。

有名どころでは、元祖ジーザス&メリーチェイン、その後のマイ・ブラッディ―・バレンタイン(マイブラね)などがいますね。

その先祖を辿ると、もちろんそこには、お馴染みのベルベット・アンダーグラウンドや数々の実験的なノイズ系アーティスト、またラ・モンテ・ヤングなんかのドローンミュージックの先達なんかが深~い洞穴の中に多数蠢いているのでした(ここらにも惹かれまくってきたなあ~)。

 

で、作品によっては、サポートメンバーも入っていたりするんだけど、ほとんどの作品がJason彼一人による録音。

マイブラのような一応リズム隊も入るバンドサウンドではなく、そのほとんど全てがリヴァーブを効かせたJasonのギターの多重録音です。

まるで暗い深海にいるか、あるいは深い霧の中にいるかのような錯覚に陥るスペーシーなサウンドなんですよ、これが(もっと詩的な表現で表したいけど、ボキャ不足)。

轟音から静謐なアンビエント的な音まで、エフェクターを駆使しつつ、ほぼギター一本で奏でています。

海外のサイトでは、アンビエント・ノイズ、オルタナティブ・ドローン・サウンドみたいな紹介もされていますですね。

 

Beckがメジャーシーンに躍り出てきた時、ベッドルーム・レコーディングという宅録オタクみたいな言葉が流行ったけど、Jasonももしかしたら、自宅で一人でコツコツと音に向き合う、そんな感じの青年だったのかも。

 

 

だった、というのは、なんと彼は36歳の若さで自らの命を絶ってしまったから、、、(涙)。

 

 

Jasonは、1970年にペンシルバニアで生まれ、2006年、ニューヨークでこの世を去ってしまったのです。

 

なので、The Azusa Planeとしての活動は、音源発表の期間としては1995年から2000年まで(正確ではないかも)の短い間でした。

しかし、この手のアーティストは表現の発露というか、簡単に曲が出来ちゃうというか(ごめん、Jason)、The Azusa Planeもご多分に漏れず、活動期間の割には作品=レコードが割と多い。

 

その頃はまだ都内の輸入盤店でアメリカンインディーズのシングルが本国と時間を開けずに割と簡単に手に入ったもので、足繁く店に通っては、あ、また出てる、といった具合に、数多くのレコードの中からThe Azusa Planeの7インチを見つけては、宝を掘り当てたかのような気分で買い集めたのでした。

で、家に帰って聴いてみると、ギュィ~ン、ドロ~ンというギターの洪水のような音響作品で、あ、また同じだ、といった具合に、うふふ、と一人満足気に微笑むのでした。

我ながら、変わった趣味だと思いますが、これがレコードコレクターの深い森のような世界で、一度入り込むと抜け出られないのです、、、大袈裟だけど。

どうせ誰もわかりゃしないさ的な自虐趣味に近いと言えば近い、です。

 親戚筋とも言える、Roy MontgomeryやWindy + CarlとかFuxaとかいった、同じ音響派の連中もどんどん作品を出すんで、あれこれ追いかけるのが大変だったなあ。

 

 

そう、なぜJasonが若くして自らの命を絶たなくてはならなかったかですが、

 

 

彼は、実は晩年、聴覚過敏症という聴覚障害の病気に悩まされ続けていたのでした。

普通の人には我慢できるような生活音でさえも、この病気の人には苦痛を伴うような異常な音として知覚されてしまうということです。

実際に耳鳴りのひどい状態に痛みを伴うという状態で、精神的にも神経的にもかなりやられてしまう病に彼の耳、脳は侵されてしまったのでした。

 

 

そして、彼はそこから逃れる手段として、死を選ばざるを得なかったのです。

 

 

詳細は、BuzzFeedに、「日常の音が拷問になる時 ~ 聴覚過敏症についての最も地獄のようなことは、それが自殺が唯一の救済のように思えるほどわずかな平凡な音を非常に耐え難いほどに大きくするということです。」という題で、自らも同じ病に悩まされているジョイス・コーエン女史の寄稿があります。

 

 

 

 

Jasonは、あくまで憶測ですが、自らのギターのフィードバックノイズや轟音リヴァーブサウンドの犠牲となってしまったのかもしれません。

言い方を変えれば、その音の世界に魂を捧げたのでしょう。

 

 

そして、とても皮肉なことですが、彼が2002年頃に在籍していたオルタナティブバンド、Mazarinのシングル曲に「Suicide Will Make You Happy」という曲があるのです。

 

 

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Mazarin 'Suicide will make you happy' Rocket Girl (rgirl34)

 

自らの命を絶たなければ、そのわずかな音さえも拷問のような苦痛となってしまう生活から逃れられなかった、孤高のミュージシャン、Jason DeEmillio。

苦痛からようやく逃れられた彼の魂が、安らかに眠ることを願って止みません。

 

 

そんな逸話からも、彼が残してくれた珠玉のギターノイズたちが愛おしく感じられてならないのです。

 

 

彼の死後、The Azusa Planeが多く作品を残したイギリスのRocket Girlというレーベルから、彼の死への追悼とバンドへの敬愛の記しとでも言えるような作品がリリースされています。

 

 

今も愛される飛行機あずさ号の音

 

 

それが、「Where The Sands Turn To Gold」(Rocket Girl rgirl83)と題された、ほぼThe Azusa Planeの音源が完全網羅された追悼アルバムです。

CD2枚+DVD+豪華ブックレットといった豪華な内容です(DVDには自分がせっせかと買い集めた7インチシングルの音源もMP3の音源でデジタル収録されてます)。

 

 

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砂が黄金に変わるところ

 

 もし、こんなマニアックな記事をたまたま読んでしまって、The Azusa Planeが気になりだしてしまった方がいらしたら、ぜひ探してみてください。

7インチは難しいかもですが、この編集盤ならまだまだ入手出来ると思います。

 

 

悲劇のギターヒーローはたくさん過去にもいますが、自分にとってのそれはJason DeEmillioというThe Azusa Planeに他ありません。

 

 

www.youtube.com